サウジアラビア、ゲーム業界の主導権を握る Saudi Arabia Takes the Controller
今回の記事は「サウジアラビア、ゲーム業界の主導権を握る」という内容です。さていったいどのような内容なのでしょうか。
今回のポッドキャストです。お聴き下さい。
本日のSentence
Experts say this move is part of the country’s “Vision 2030” plan to reduce its dependence on oil.
専門家によると、その理由は、石油に依存する経済からの脱却を目指す国家計画「ビジョン2030」の一環だからです。
ボキャブラリー
日本語訳
世界のゲーム産業は約3,000億ドルの規模を誇り、映画、ストリーミング、音楽をすべて合わせたよりも大きいと言われています。いま注目されているのは、サウジアラビアがこの巨大な市場の一部を手に入れようとしていることです。サウジアラビアの公共投資基金(PIF)は、世界最大級の国家ファンドの一つで、アメリカ第3位のゲーム会社エレクトロニック・アーツ(EA)を550億ドルで買収しようとしています。専門家たちは、この取引によってサウジアラビアがゲーム業界の大国になる可能性があると見ています。
PIFにはSavvy Games Groupが含まれており、すでに多くの有名ゲーム企業に出資しています。アメリカのゲーム開発会社Scopelyや「ポケモンGO」の開発元Nianticを買収し、スウェーデンのEmbracer Group(「トゥームレイダー」シリーズを所有)にも出資しています。さらに、日本の任天堂、カプコン、コーエー、東映、スクウェア・エニックス(ここでは取締役の席も保有)など、韓国のネクソンやNCSoft、アメリカのTake-Two(グランド・セフト・オートの開発元)にも出資しています。EAを除いても、サウジアラビアのゲーム投資額はすでに約117億ドルに達しています。また、eスポーツ分野にも力を入れており、eスポーツ・ワールドカップを開催し、2027年のオリンピック・eスポーツ大会の開催も予定しています。
EAの買収が完了すれば、サウジアラビアは「マッデン」「ザ・シムズ」「FC(旧FIFA)」といった人気シリーズを手に入れることになります。「FC」は、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子のお気に入りとも言われています。
では、なぜサウジアラビアはこれほどまでにゲーム産業へ投資しているのでしょうか。
専門家によると、その理由は、石油に依存する経済からの脱却を目指す国家計画「ビジョン2030」の一環だからです。PIFを通じて、政府はゲーム産業を成長させ、数多くの雇用を生み出し、国内総生産(GDP)に数十億ドルを加えることで、新しい経済の柱を築こうとしています。
サウジアラビアの影響力が強まることで、ゲームの作られ方も変わるかもしれません。これまで「デザート・ストライク」や「バトルフィールド2」のような作品では、中東のキャラクターが悪役として描かれることがありました。しかし、サウジアラビアの投資家が関わることで、そうしたテーマは避けられるかもしれません。ハリウッドが中国との関係を保つためにストーリー内容を調整するように、ゲーム開発者もサウジ側との関係を考慮して内容を調整する可能性があります。こうした流れによって、今後のゲームでどんな物語が描かれ、誰が「悪者」になるのかが変わるかもしれないのです。
【テーマ】Saudi Arabia Takes the Controller / サウジアラビア、ゲーム業界の主導権を握る
It’s first time to know the scale of game industry in Saudi Arabia.
I think huge oil money must make them the real game changer.
(日本語訳:サウジアラビアのゲーム産業の規模を知ったのは初めてでした。巨大なオイルマネーが、彼らを本当の「ゲームチェンジャー」にしてしまうのだろうと思います。)
It seems quite natural that oil money flows into the game industry, given its economic scale and cultural influence.
Saudi Arabia is buying the 21st century’s propaganda tool by investing in the game industry, as mentioned in today’s topic. Western white people, who were protagonists, might be villains.
Japan has technology and content, but it has less money. I’m afraid that they will buy Nintendo in the near future.
(日本語訳:ゲーム産業の経済規模と文化的影響力を考えると、オイルマネーがそこに流れ込むのはとても自然に思えます。きょうのトピックにあったように、サウジアラビアはゲーム産業に投資することで「21世紀のプロパガンダツール」を買おうとしているのだと思います。これまで主人公だった西洋の白人が、これからは悪役になるかもしれません。日本は技術とコンテンツは持っていますが資金力が乏しいので、近い将来ニンテンドーまで買収されてしまうのではと心配しています。)
サウジアラビアとNEOMで進んでいる全長170km高さ500mの直線高層都市THE LINEプロジェクト。日本からも何人か参画しています。道路や車、排気ガスのない、将来の都市コミュニティのあり方を体現し、100%再生可能エネルギーにより稼働。交通やインフラよりも人々の健康と幸福を優先するよう計画された自然を優先した都市NEOM。ゲームもですが、先端的都市コミュニティのデザインとしてもサウジアラビアは進んでいるのでしょうね。2030年には次の万博会場となり、2024年にはFIFAワールドカップ開催国とのこと。今まで石油のイメージでしかなかったサウジアラビアがドバイの次に日本でも話題になってくることは間違いないと思います。
I consider Saudi Arabia’s expansion in the game industry to be a significant development for people in the Middle East.
Background: From exporting culture to leading stories.
In the past, the gaming industry was dominated by the United States and Japan; therefore, many stories and characters were based on Western values. In these stories, the Middle East and Arab regions were often depicted as enemies, terrorists, or conflict zones.
Saudi Arabia’s government, under the “Vision 2030” initiative, aims to build a new international image for the country—not just to diversify its economy. However, there are several challenges, such as restrictions on freedom of expression and the risk of self-censorship.
For example, game developers might alter content when dealing with Middle Eastern politics, avoid depicting the Saudi royal family as antagonists, or restrict portrayals of women’s clothing and romantic relationships.
On the other hand, there are positive aspects. The country could promote games based on Arabian history, culture, and mythology; nurture young developers; establish local studios; and potentially influence the global market as a growing hub for Middle Eastern gamers.
I believe that if the fund is used in a democratic and open way, it could lead to the expansion of multiple perspectives in the global gaming culture.
(日本語訳:サウジアラビアがゲーム産業を拡大しているのは、中東地域の人々にとって大きな転換点になると考えています。背景には「文化を輸入する側」から「物語を主導する側」へという変化があります。かつてゲーム産業は米国と日本が主導していたため、物語やキャラクターは西洋的価値観に基づいたものが多く、中東やアラブはしばしば「敵」「テロリスト」「紛争の地」として描かれてきました。サウジはビジョン2030のもとで、経済多角化だけでなく新しい国際的イメージを築こうとしていますが、表現の自由の制限や自己検閲のリスクといった課題もあります。たとえば中東政治に触れるときに内容を変えたり、王室を敵役にしなかったり、女性の服装や恋愛表現に制限がかかったりする可能性があります。その一方で、アラビアの歴史や文化・神話に根ざしたゲームを出したり、若い開発者を育成したり、現地スタジオを作ったりして、中東のゲーマーが世界市場に影響を与えるハブになる可能性もあります。資金が民主的かつ開かれた形で使われれば、世界のゲーム文化により多様な視点が広がるだろうと思います。)
サウジアラビアが脱オイル戦略の一環としてこれほどまでにゲーム産業に投資していたとは知りませんでした。確かに「約3,000億ドルの規模を誇る映画・ストリーミング・音楽をすべて合わせたよりも大きい産業」というのは魅力的ですし成長性もありそうです。
今回の記事でゲームの中の「悪役」が変わるかも、という指摘が非常に興味深かったです。
ChatGPTに悪役の描かれ方の変化について聞いてみました。…(中略)…
こう見ていくと、多少投資家への忖度はあるのかも知れませんが、悪役はその時代時代における人間にとっての脅威を反映しているのだと感じました。
悪役が「普通の人の欲望」になってきている点が興味深かったです。アンナハーレントが「悪人は残酷な意図を持った悪魔的存在ではなく、自ら考えることを放棄した人」だと言っていたことを思い出しました。このような究極の悪人がゲームの世界に現れないことを祈ります。
長期を見据えたオイル依存からの脱却ですね。ChatGPTに聞くと2018年にはサウジの政府系ファンドが「サウジeスポーツ連盟(Saudi Esports Federation)」を設立し…とのことです。かなり早くから価値に気づき、日本のゲームメーカーにも資本が入っていたことに驚きました。
資本が強化されたことで盤石な経営ができるのは良いことですが、経営側にまで入り込むと、各方面に忖度した開発しか叶わず魅力が減少、結果として市場価値が下がってしまっては本末転倒になりかねませんね。
オイルマネーに買われているのは少々気にはなりますが、日本のゲームが評価されるのは嬉しい事ですね。ゲームもAIも成長産業で、脱オイルを目指すうえで戦略的にも理にかなっていますが、一方で電力消費の問題もあるので、その点をどう進めるのかが気になりました。
よほどのエネルギーシフトがない限り、200年程度は埋蔵量があると言われている石油マネーはしばらく尽きることはないのでしょう。日本は投資を呼び込み、脱石油を掲げるサウジアラビアとのエネルギーシフト後の協調も見据えて、その投資から最大限に成長することが求められるのかもしれません。
Oil money is circulating in places like this kind of industry too, isn’t it? While I have doubts about whether investments strengthened based solely on future potential—rather than inherent national strengths—will truly take root, perhaps their immense financial power could make them a game changer. In any case, I believe monitoring the movements of African nations will be essential in tracking future global trends.
(日本語訳:こうした産業にもオイルマネーが回っているのですね。将来性だけを根拠にした投資であって、その国固有の強みに基づいていない場合に、本当に根付くのかにはやや疑問がありますが、あの莫大な資金力なら本当に「ゲームチェンジャー」になる可能性はあります。いずれにしても、今後の世界動向を追うにはアフリカ諸国の動きも見ておく必要があると思います。)
2022年のサウジの人口は若年層が多く、ビジョン2030の中でゲーム・esportsへの投資が盛んなのは若者の雇用と人材育成を見据えているから、という補足をされています。さらにアフリカ・南アジアでも若年層が多く、「若い世代が国を動かす」未来が来るとの未来予測が含まれているので青に寄せました。
サウジアラビアが世界のゲーム業界の一大パトロンになっている事実を紹介しつつ、「国内にノウハウが蓄積するわけではないのでは」「sports-washing / game-washing といった批判もある」と、構造面での懸念を述べているため批評(赤)に分類しました。
ChatGPTによる「スポーツ洗浄/ゲーム洗浄」の説明も批評的文脈です。
日本のゲーム・漫画文化の海外評価への言及で、テーマ理解を補う内容なので補足(緑)としました。
今回の記事をほかのトピックと接続して、「サウジがゲームでアップル的ポジションをとれるかどうかが他分野にも波及する」と将来の分岐点を描いているため、未来予測(青)にしました。多分野・多地域の記事を統合しているので、同テーマ内での上段配置に向く内容です。
参考リンク:
Skiing in the Desert / 砂漠でスキー
From Play to Innovation: Global Impact of Gaming
Africa’s BPO Opportunity
Can Cars Finally Become “Smartphones on Wheels”?
【テーマ】How Legacy Businesses Are Reinventing Themselves / レガシー・ビジネスに学ぶブランド改革
スターバックスの混雑をきっかけに「細かな利用者の気持ちが老舗の優位性を変える」→「進まざる者は退く」という未来へつなげているので、ここでは未来に向けた姿勢のコメントとして青にしました。引用2つ(福沢諭吉・ウォルトディズニー)も変化を促す方向ですね。
【テーマ】Can Cars Finally Become “Smartphones on Wheels”? / 自動車、ついに「車輪付きスマートフォン」になるか?
フォードとアップルの収益構造比較、外部委託と自社設計の話、そして「当たり前が当たり前でなくなる」という示唆があり、記事理解を深める補足なので緑にしました。
ポッドキャストの続きは
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ゲームとは無縁な日々なので、中東の動きなど初耳でした。市場規模ほんとに?と思ってchatGPTくんの出番。体感的に感じていた「動画」が市場規模としては一番大きなものでしたが、トピックのソースが気になるとこですね。
数日記載のあった「フットノート」とは意味合い異なりますが、学習のあとにトピックソースの記載あるとうれしいです→マットさん
●音楽 500億ドル(2025)
http://bit.ly/4hzgZW8
●動画ストリーミング 6700億ドル(2025)
http://bit.ly/4qACsSG
●音楽 610億ドル(2022)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/contents/musicindustry_data_2407meti3.pdf
●ゲーム 2580億ドル(2024)
https://www.sdki.jp/reports/gaming-market/590641644
※出典提示の要望=補足情報と判断しました。