親友には「誰にでも優しく」してほしいわけではない? Why We Don’t Always Want Our Best Friends to Be Nice to Everyone
今回のエピソードでは、2026年のイグ・ノーベル平和賞を受賞したユニークな研究をご紹介します。アメリカとインドの約1,200人を対象にした調査から見えてきたのは、「人は必ずしも、親友に『誰にでも優しく』してほしいわけではない」という驚きの心理でした。
今回のポッドキャストです。お聴き下さい。
日本語訳
良い友達とは、どんな人でしょうか。優しさ、信頼、そして忠誠心。おそらく、そんな言葉が思い浮かぶでしょう。ところが研究によると、私たちは親しい友人に、時としてもう一つ別のものを求めることがあるようです。それは、自分が敵だと感じている相手に対しては、あえて優しくしすぎない姿勢です。
こうした意外な発想を扱った研究が、2026年のイグ・ノーベル平和賞を受賞しました。受賞したのは5人の研究者で、2023年に学術誌『Evolution and Human Behavior』に発表された研究では、人々が理想の親友に対して、自分自身、見知らぬ人、そして敵とみなす相手に、それぞれどのように接してほしいと考えるのかを調べました。
研究者たちが出発点としたのは、単純な疑問でした。「私たちは本当に、友人には誰に対しても親切でいてほしいと思っているのだろうか」というものです。これを確かめるため、米国とインドの合計1,183人を対象に、6つの研究が行われました。参加者は、自分が理想とする親友にどのような性質を求めるかを答えました。また、研究ごとに異なる方法を通じて、その友人に、自分、見知らぬ人、そして敵やライバルに対してどのように振る舞ってほしいかについても回答しました。
結果からは、興味深い意外性が浮かび上がりました。人々は基本的に、友人には自分に対して親切で信頼できる存在であってほしいと考え、見知らぬ人に対しても親切であることを望んでいました。ところが、相手が「敵」になると、その好みは変化しました。一部の研究では、敵に対して親切に接する友人よりも、むしろ厳しく、敵対的に振る舞う友人のほうが好まれるという結果が出たのです。
なぜなのでしょうか。一つの可能性として考えられるのが、忠誠心です。もし誰かが自分に敵意を向けていたり、自分の失敗を望んでいたりするなら、中立的な態度を取る友人より、自分の味方になってくれる友人のほうが、より支えてくれているように感じられるのかもしれません。また、友人が他人にどう接するかは、間接的に自分にも影響を及ぼすことがあります。そのため、ライバルに対して自分の側に立ってくれることのほうが、自分に向けられるのと同じ優しさをその相手にも示すことより、価値があると感じられる場合があるのでしょう。
この研究結果が示しているのは、友情における私たちの好みは、単純に「誰にでも優しい人がよい」というものではない、ということです。その優しさが誰に向けられているのか、そしてどのような状況なのかも重要なようです。私たちは、自分に対しては優しく信頼できる友人を望む一方で、状況によっては、自分が敵だとみなす相手には、より厳しい態度を取ってほしいと考えることもあるのです。
友情の条件としては、少し奇妙に聞こえるかもしれません。しかし、だからこそ、このイグ・ノーベル賞受賞研究は興味深いのでしょう。この研究は、「良い友達だ」と思われるために大切なのは、単に優しいことだけではなく、その優しさを誰に向けるのかという点も、時として関係している可能性を示しています。
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