ブランドの未来は「顧客とともにつくる」時代へ Why the Future of Branding Belongs to the Customer
今回の記事は「ブランドの未来は「顧客とともにつくる」時代へ」という内容です。さていったいどのような内容なのでしょうか。
今回のポッドキャストです。お聴き下さい。
日本語訳
これまで多くの企業は、消費者文化を「観察し、分析し、予測するもの」と考えてきた。そして、そこで得た情報をもとに商品や広告をつくり、再び消費者に売り込む。それがマーケティングの基本的な発想だった。
しかし、Pacsun(パクサン)のCEO、ブリーアン・オルソンは、著書『Co-Created: The Cultural Strategy That Redefined Pacsun』で、そこから一歩進んだ考え方を提示している。
それは、文化を会議室の中から動かそうとするのをやめ、生きている人々と一緒にブランドをつくるという発想だ。
一見すると単純な違いに思える。しかし実際には、企業のあり方そのものを変える考え方である。
Pacsunにとって「共創(Co-Creation)」は、単なるマーケティング用語ではない。顧客から得られた声や反応は、商品企画だけでなく、企業とのコラボレーション、コンテンツ制作、さらには経営上の意思決定にも取り入れられている。
同社が重視する「ファッション、音楽、アート、スポーツ」という4つの文化領域も、広告のテーマとして利用するためだけのものではない。若い世代が実際に自分のアイデンティティや仲間とのつながりをつくっている場所に、ブランド自身が参加するための入り口なのである。
この考え方を象徴する出来事がある。
2023年、TikTokクリエーターのLyla Biggsが、Pacsunの「Casey low-rise baggy jeans」を履いた何気ない動画を自宅の寝室から投稿した。当時、彼女のフォロワーはわずか約5,000人だった。
ところが動画は瞬く間に拡散。Pacsunはブラックフライデーを前に、わずか48時間で1万1,000本のジーンズを販売した。その後、このスタイルはTikTok経由で2,000万ドルを超える売り上げにつながったという。
ここから得られる教訓は、「もっと有名なインフルエンサーを探せ」ということではない。
むしろ逆だ。
企業が綿密に設計した広告キャンペーンよりも、一人の消費者から自然に生まれた熱意のほうが、大きな力を持つことがある。
Pacsunはこの発想をさらに広げ、A$AP Rocky、Jenners、Formula 1など、さまざまな人物やブランドとの協業を進めてきた。重要なのは、若者に向かって広告を発信することではなく、彼らがすでに参加しているコミュニティの中にブランド自身も入っていくことである。
オルソンの主張は、ファッション業界だけの話ではない。
変化の速い市場では、ときどき顧客調査を行い、その結果を経営陣が会議室で分析するだけでは、ブランドの「今らしさ」を維持することは難しい。
必要なのは、顧客の声を継続的に受け取る仕組み、つまり**“always-on feedback loop”**である。そして企業側がクリエイティブの主導権を独占せず、ときには顧客に委ね、その声を素早く商品や行動に反映できる組織でなければならない。
『Co-Created』から得られる最も重要な示唆は、おそらくここにある。
顧客はもはや、商品開発プロセスの最後に待っている「買い手」ではない。顧客自身が、そのプロセスの一部になりつつある。
これからの企業に問われるのは、文化をどれだけ正確に追いかけられるかではないのかもしれない。
顧客とともに文化をつくり、その変化と一緒に成長していけるか。
ブランドの未来は、そこにかかっている。
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