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現在の変化を捉え、将来の可能性を考える手法SCAN 3
2014年10月13日
Strategic Business Insight (SBI)日本代表の高内氏のSCANに関する記事その3です。 ※SBIはスタンフォード研究所のビジネスユニットです。
SCANTMは予測をしない
驚かれるかもしれませんが、実はこのような仕事をしながらSBIは明確に「未来は予測できない」という立場をとっています。SCANTMの目的は決して「予測」ではないのです。
今回サンプルでお渡ししたレポートには、日本の地震に関する予言的な表現や、後にSNSと言う社会現象を引き起こす生活者の動機やその兆候について語られていますが、それでも私たちは頑固に「予測はできない」と言い切ります。社会に芽生えた今までになかった傾向を見出したそのとき私たちにできることは、その変化の持つ意味や理由について考え、未来の可能性に思いを馳せることぐらいしかないということです。
私たちは、こうしたレポートをクライアントと共有したうえで、共に考え、それぞれの企業活動に対する影響を議論し、「しなければならないこと」「観察し続けなければならない事柄」を共有するお手伝いをしています。このようにしてScanningを継続し、社会で起きている変化と自社との関連について議論することに慣れたクライアントは、自社との関連という文脈の中で多くの「変化の予兆」を記憶していきます。ある文脈を伴って記憶された「変化の予兆」は、結構しっかり覚えておけるものです。それはまるで、抗体についたレセプターのように、同種の変化に反応するようになります。後日テレビや雑誌、街を歩く人の行動を見たときに「ハッと」した気付きとともに、「ああ、これはあの時話をしたあの変化が進んでいることを示している」と思い起こされることが増えればしめたものです。その組織は、未来の断片に他の人より早く気付くチャンスを増やしたことになるのです。
繰り返しになりますが、未来を予測することはできません。だからこそ、こうした「文脈を持った記憶」を数多く共有し、変化の予兆に対する感度を向上させていくことが、戦略立案や事業企画を担当する組織や個人には欠かせないのです。
ただ一方で、残念なことに世界中の全ての変化に気付くことはできません。だから多くの多忙な組織の中で、「気付き」を大切にするマインドは共有されていても、何をすればよいのか途方に暮れ、結局何も組織的な取り組みがなされないまま毎日が過ぎてしまっているようです。SBIのSCANTMは、こうした能力や知識ベースが求められる組織が、日常業務に集中しながら少しでも変化に対する感度を上げて備えるためのベストエフォートの一つなのです。もちろんそれはSCANTMそのものである必要はありません。宝の山かもしれない、同僚たちの気付きを放ったままにしておかないためにできることは、他にもあるでしょう。
さて、あなたの組織はどのようにしてレセプターを増やし、変化に対する感度を上げる努力をしていますか?