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  マットBlog

信用リスクの推移

G-20 Focuses on Crisis as Europe Mulls Greek Writedown

Greek 10yr Bond
ギリシャ国債10年物金利
Bloombergニュースから。G20でギリシャ国債を保有する銀行が最大50%まで評価損として計上するなどして救済措置を話し合うと書かれています。 このサイトでも何度か書きましたが、ギリシャの金利は3年物で170%(今年の6月は20%程度)をつけるなど手が付けられない状態になっています。 Benchmark(指標)となる10年物の金利も今では20%を超え始めました。 左のチャートを見ると昨年の後半から3倍近く金利が上昇しています。実はこの右肩上がりのチャートはイタリア、スペインなど他の懸念される国々も同じ形状をしています。 これに比較すると米国、日本など国債評価は格下げされたものの金利はここ数ヶ月で落ち着きを取り戻しています。
日本国債(JGB)10年金利
  また、同じ欧州でもドイツやフランスなどの金利の推移も米国、日本のそれと類似しているのです。 だいたい右のチャートのような形にピークから下山しています。 そうなると今、各国の国債金利の変化はおおむね2つのパターンに分けられて、上昇が止まらないギリシャ型と一旦落ち着きを取り戻している米国型の二種類です。 それにしても右のJGB10年債の金利を見ると3月の震災や格付けを見直された後にも安定して下げ続けています。 ドイツやフランスはやはりEUという渦中にある国々だからなのか若干金利に不安が盛り込まれているようにも見えます。 ギリシャ危機の救済をEUとしてどう行うのかというまさに胸突き八丁にさしかかった時点でここから金利が上昇しそうな様相をこのチャートは呈しているのが判りますね。
ドイツ国債10年物金利
ただ、国家危機が叫ばれている中で具体的に金融危機の引き金を握っている金融機関の信用リスクは我々の知らないところでかなり悪化しているのですね。 これは米国、日本をはじめドイツ、フランスの金融機関も軒並みその信用リスクが悪化しており、G20の閣僚会議で確たる救済措置が示されなければソブリン債を多く保有している銀行はひどく傷むとともに景気を今一度悪化させることになりかねません。 日本のメガバンクでもみずほファイナンシャルグループは、比較的欧州の国債の保有率は低くて、むしろ三菱UFJ銀行などがスペインをはじめとするソブリン債をかなり保有していると聞いています。 一方でアメリカ金融機関もこれまでサブプライム問題でメリルリンチを引き受けたBank of America が市場から危険視されていましたが、欧州危機で今度はMorgan Stanleyの信用リスクが高くなっていることに気づきました。下のチャートは米国大手金融機関のCDSスプレッドのチャートですが、10月6日にはモルガン・スタンレーが544bpと最も高く、続いてバンク・オブ・アメリカが463bp, ゴールドマン・サックスが370bpとなっています。実はこのCDSスプレッドの数値はイタリア、スペインといった問題の欧州国よりも高い数値なのです。 ちなみにイタリアの5年CDSは430bp、スペインは390bpなのです。 ギリシャはといいますと・・・・(下に続く)
CDS Spread (Bloombergから)
ギリシャのCDSスプレッドは、なんと3000bpでその上げ幅も週に200bp近く上がる時もありました。 CDSはご存知のとおりCredit Default Swapといって、国や金融機関、事業法人などあらゆる法人の信用リスクを保険としてSwap取引をするものです。つまりギリシャの倒産リスクを3000bp(1ベーシスポイントは0.01%)を保険として売る行為になります。 Swapの買い手(保険を払ってリスクを売る、あるいは回避する) Swapの売り手(保険料をもらい、リスクをとる) もしも銀行のポートフォリオの中に「あっ!ギリシャ国債を買っていたのか!(汗)」となった場合はギリシャが破綻してしまった時のリスクを回避し保有しているバランスシートの中の国債にヘッジをかけるためにCDSを買うのです。 このSwap取引を保有していて5年間ギリシャに何も起きなければ、Notional Amountという想定元本に上のベーシスポイントをかけたものがそのまま確保できるわけです。しかし一旦ギリシャが破綻したり、更にリスクが高まるとこのBPは上がってしまい保険を売った側は、大きな損害を被るわけですね。 他方、保険を買った方は3000BPだったものが仮に5000BPにスプレッドが上がった場合は物の価値と同じでその差額を反対取引をすることで確定することが出来ますね。 おおよそ概念的な説明ですがCDSや他のDerivatives取引と言われるものはこのような形態で取引されリスクを回避したりとったりしているのです。 ソブリンのリスクとともに金融機関の信用リスクにも着目する必要がありますね。